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相殺適状に関する最高裁判決(H25.2.28)

平成25年2月28日に、最高裁第一小法廷で、過払金充当合意のない契約における相殺適状について、注目すべき判決が出ました。

平成25年2月28日最高裁第一小法廷判決

判決要旨

既に弁済期にある自働債権と弁済期の定めのある受働債権とが相殺適状にあるというためには、受働債権につき、期限の利益を放棄することができるというだけではなく、期限の利益の放棄又は喪失等により、その弁済期が現実に到来していることを要する。

概要

本件は、借主が、自己の所有する不動産に設定した根抵当権について、その被担保債権である貸付金債権が、過払金返還請求債権との相殺により消滅したとして、貸主に対し、所有権に基づき根抵当権設定登記の抹消登記手続きを求めるものです。

原審では、上記相殺につき、自働債権の時効消滅以前に相殺適状にあったと判断され、民法第508条(※1)によりその相殺の効力が認められましたが、これを貸主側が不服として、上告受理申立てをしました。
 

最高裁の判断は以下のとおりです。

民法第505条1項は、相殺適状につき「双方の債務が弁済期にあるとき」と規定しているのであるから、その文理に照らせば、自働債権のみならず受働債権についても、弁済期が現実に到来していることが相殺の要件とされていると解される。
また、受働債権の債務者がいつでも期限の利益を放棄することができることを理由に両債権が相殺適状にあると解すること、上記債務者が既に享受した期限の利益を自ら遡及的に消滅させることとなって、相当でない。
したがって、既に弁済期にある自働債権(※2)と弁済期の定めのある受働債権(※3)とが相殺適状にあるというためには、受働債権につき期限の利益を放棄することができるというだけではなく、期限の利益の放棄又は喪失等により、その弁済期が現実に到来していることを要する。


※1 民法第508条・・・「時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合は、その債権者は、相殺をすることができる」
※2 自働債権・・・本件の場合、「過払金返還請求債権」のことをいいます。
※3 受働債権・・・本件の場合、「貸付金債権」のことをいいます。

弁護士の見解

過払金請求者側にとっては、大変不利な判決です。この判決が出る以前は、民法508条の適用で、相殺できる場合がほとんどでした。
しかしながら、相殺適状の時期及び民法508条の適用範囲について明示的な判断が示されたという点からすると、重要な判決と言えるでしょう。
この判決を機に、類似の事案においては、いつ相殺適状が生じたのか注意深く検討する必要がありそうです。


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